保育所児童保育要録の書き方〜平成30年度からの10の姿〜

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保育の引き出し

保育園で年長の担任を持つと、年度末に保育要録の記入があり、膨大な仕事量に追われることもあります。

保育所の保育要録は、義務付けられているのは年長児だけですが、書く内容は園生活全般に関わることという事で、幼児の間は毎年書く園、乳児の保育記録も毎年書く園など、その実情は様々です。

平成30年度より、保育要録は記入の様式も含めて見直されることとなりました。
今回は、見直された部分も含めて、書き方のコツや最新の参考本などもお伝えしていきたいと思います。

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保育所児童保育要録とは?

元々、幼稚園幼児指導要録に関しては、学校教育法によって定められている公簿であり、小学校への送付が義務付けられていたものの、保育所の保育要録にはそうした性格はありませんでした。
しかし、幼保一体の流れを受け、平成21年度に改定して施行された「保育所保育指針」によって、保育所からも子供の記録を小学校へ送付することが明記され、公簿としての性格を持つようになりました。

保育所児童保育要録は、「入所に関する記録」と「保育に関する記録」があります。

平成30年度までは、「保育に関する記録」には「子どもの育ちに関わる事項」、「養護に関わる事項」、「教育に関わる事項」の3つの事項を記入することが定められていましたが、平成30年度より変更されるので、注意が必要です。

平成30年度の改正について

厚生労働省が出した保育所保育指針の適用に際しての留意事項についてという通達の中で、保育所児童保育要録の見直しについて言及されています。

一つ目は「養護及び教育が一体的に行われるという保育所保育の特性を踏まえた記載事項」です。
今までは、養護に関する事項と教育に関する事項が別の欄で記載されていましたが、養護と教育は別々ではなく、密接しながら一体的に行われるという保育所保育の現状を踏まえ、記載しやすいよう記入欄が統合されました。

二つ目は「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」を記入することで、小学校での指導に活かされるようにすることです。
こちらは、幼稚園幼児指導要録でも、最終学年については同じように記入するよう見直されています。

詳しい内容については後述します。

こちらの参考図書も、是非活用しましょう。

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書き方や記入内容

まず、厚生労働省が示している資料について、目を通してみましょう。

保育の過程と子どもの育ちに関する事項

最終年度の重点

年度当初に、全体的な計画に基づき長期の見通しとして設定したものを記入します。

個人の重点

こちらは幼児一人ひとりに対し、1年間を振り返って特に重視して指導してきた点を記入します。
実際に1年間、幼児と接しながら保育する中で、特に重点を置いたものを記入します。

個人の重点は、年度の途中で見えてきたものを補助簿などに記入しておきます。
当初、予想した物とは異なってくる場合もありますので、年度末に1年間を振り返ってまとめて記入する方がいいでしょう。

個人の重点は、保育者がどれだけ子供の様子を捉えているか、簡潔にまとめたものになります。
しっかりと子供の様子を把握し、一人ひとりに合った重点を考えましょう。

保育の展開と子どもの育ち

最終学年の1年の子供の姿について、養護や教育を一体として行う保育の特性を踏まえながら、記入していきます。
記入内容については、次のような事に気を付けて書きましょう。

5領域のねらいを視点に書く

幼児の「領域」は、小学校以降の「教科」とは違い、領域の間を行ったり来たりしながら成長していきます。
なので、きっちりと領域に分けて書く必要はありませんが、子どもの行動がどの領域に近いのかを捉えながら、要録を書く為の視点にしていくことで、要録の記入がわかりやすくなります。

就学後の指導に必要と考えられる配慮事項等について記入する

基本的には、子供の成長した部分や伸びようとする部分について記入します。
小学校以降の指導でも課題となる点や配慮すべき点についても、客観的に、かつ肯定的に書き、小学校以降の教育に活かしてもらえるようにしましょう。

幼児期の終わりまでに育ってほしい姿

平成30年度に改訂された保育所保育指針の第1章4(2)に示されている、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を活用して書くことが示されています。
この「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は10項目に分かれており、「10の姿」として、5歳児に関して言及されたものです。

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、卒園までに到達すべき目標ではありません。その子供に育まれている資質・能力を捉え、指導の過程と育ちつつある姿を分かりやすく記入するものです。
また、記入の際は、項目別に書くのではなく、総合的に判断して書くようにします。

保育所保育指針の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を抜粋してみました。

ア 健康な心と体
保育所の生活の中で、充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ、見通しをもって行動し、自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる。イ 自立心
身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚し、自分の力で行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信をもって行動するようになる。

ウ 協同性
友達と関わる中で、互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的の実現に向けて、考えたり、工夫したり、協力したりし、充実感をもってやり遂げるようになる。

エ 道徳性・規範意識の芽生え
友達と様々な体験を重ねる中で、してよいことや悪いことが分かり、自分の行動を振り返ったり、友達の気持ちに共感したりし、相手の立場に立って行動するようになる。また、きまりを守る必要性が分かり、自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、きまりをつくったり、守ったりするようになる。

オ 社会生活との関わり
家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに、地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつようになる。また、保育所内外の様々な環境に関わる中で、遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報に基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用したりするなど、情報を役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用するなどして、社会とのつながりなどを意識するようになる。

カ 思考力の芽生え
身近な事象に積極的に関わる中で、物の性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたりし、考えたり、予想したり、工夫したりするなど、多様な関わりを楽しむようになる。また、友達の様々な考えに触れる中で、自分と異なる考えがあることに気付き、自ら判断したり、考え直したりするなど、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをよりよいものにするようになる。

キ 自然との関わり・生命尊重
自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をもって考え言葉などで表現しながら、身近な事象への関心が高まるとともに、自然への愛情や畏敬の念をもつようになる。また、身近な動植物に心を動かされる中で、生命の不思議さや尊さに気付き、身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり、大切にする気持ちをもって関わるようになる。

ク 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつようになる。

ケ 言葉による伝え合い
保育士等や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、経験したことや考えたことなどを言葉で伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる。

コ 豊かな感性と表現
心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気付き、感じたことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜びを味わい、意欲をもつようになる。
厚生労働省「保育所保育指針」より

普段の保育で特段に意識している部分ではありませんが、要録記入を意識してきた時には、子供の成長の様子と方向性を見据えておきましょう。
また、記入の際は「10の姿」を参考にしながら、小学校の先生に子供の様子がわかるよう記入しましょう。

厚生労働省が出している保育所保育指針解説も参考になるので、一度目を通してみましょう。

最終年度に至るまでの育ちに関する事項

子どもの入園当初の姿から、最終学年に至るまでの成長を記します。
子どもによっては6年分の保育記録があると思いますが、小学校以降の指導で特に重要と思われる部分を書きます。
子どもの個人記録を元に、今までに担任を持ったことのある保育士にも協力してもらって書くといいでしょう。

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書き方のポイント

年度末にはどうしても保育要録書きに追われてしまうもの。
年度の初め、もしくは途中からでも用意しておくことで、記入がスムーズに行えます。

個人記録をこまめに取っておく

園によっては、補助簿を持っていたり、各園のテンプレートを利用して、5歳児でなくでも個人の記録を取ることを義務付けられている園もあるかと思います。
0歳児では毎月、1~2歳児は2~3か月に1回程度、記録を取ることが望ましく、次の担任へと引き継げるように、また5歳児での要録作成に役立つように、記録を残していかなければなりません。
3歳児以降の幼児クラスでも、一定間隔ごとに自分で記録を取っておき、年度末にまとめて記録を残していきましょう。

1年と言うスパンの中でも、子供の成長は一進一退を繰り返しながら、前進していきますよね。
ほんのちょっとしたきっかけが、子供の成長を大きく動かす原動力になることもあります。

小さな出来事を見逃さず、こまめに記録に取っておくことで、後から振り返った時に成長のつながりが見えてきて、要録記入がスムーズになりますよ。

記録は、必ず日付や時期も一緒に記入しておきます。

子どもの成長過程を捉える

保育要録は、子供の課題を明らかにすることではありません。
保育者が考える子供の課題や重点に対し、どのように指導し、その結果としてどのように成長したのかを明らかにすることが大切です。

子どもの成長しようとする部分、伸びようとしている子供の資質について明確にし、小学校の教育につなげていくことが大切です。

ネガティブな表現や極端な言い方は避ける

保育士の思い込みでネガティブな表現をしたり、極端に悪く書くことはNGです。
また、極端に良く書くことも避けたほうがいいでしょう。

できるだけ客観的に子供の姿を捉えながら、断定的な言葉を避け、柔らかい言葉遣いで書くように心がけましょう。

子どもの姿を具体的にイメージできるように

子どもの姿は、場面によって変化するものです。
小学校の先生が読んで、「要録を読んだ子供の姿と違う」とならない為にも、保育士の伝えたい子供の姿が、どのような場面でのことかも説明も加えていくことが大切です。

例えば、「自分の意見を伝えることができる」子どもの姿を伝えたい、としましょう。
ただ「自分の意見を伝えることができる」と書いても、どんな風に、どんな場面で、というイメージが沸きにくく、小学校以降の子供の姿と乖離してしまう可能性があります。

「制作展でのグループ活動では、作品のイメージを考えながら、こう作りたいなどと、自分の意見を伝えることができた。」など、子供がどのような場面でその特性が見られたのかを、具体的に示すとわかりやすいですね。

興味や関心、遊び、生活面を記入する

子どもがどのような事に興味や関心を持ち、遊びや生活の中でどのように取り組んでいたかを書くようにします。
遊びの傾向や、生活態度など、子供の心情や意欲、態度なども交えて具体的に書くことで、わかりやすい要録になりますよ。

プライバシーや人権に配慮する

子どもの保育は、家庭と園との連続性が大切であり、子供の家庭での環境が保育で影響することもあるでしょう。
しかし、保育要録には、保護者の職業や年収、家族構成など、本児とは無関係なことは記載しません。
小学校へ送付するに当たって、その子供のプライバシーに配慮し、人権が守られているか、子供の最善の利益が守られているかどうかに気を付けて書き示す必要があります。

簡単な下書きを用意する

パソコンを使って作成している園では、下書きがなくてもいいのですが、手書きであれば、書き直しが出来ません。
誤字や脱字に対しては、訂正印を押すことで訂正が可能ですが、文章を入れ替える、という様な大幅な修正が出来ないのです。

また、書くスペースには限りがあります。
長文を避け、簡潔な文章でまとめていく為にも、下書きがあるといいですね。

書きたいことが読み手側にもしっかりと伝わるように、簡単な下書きを用意しておくことが大切です。

下書きには、パソコンのワープロソフトを使うと便利です。

個人情報の取り扱いには、十分に注意しましょう。
基本的に、指導要録は持ち出し厳禁となっている園が多いと思います。
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おすすめの参考図書

新しい保育所保育指針に対応した保育要録について、持っておきたい参考書をご紹介します。

子どもの育ちを伝える 保育所児童保育要録の書き方&文例集 第2版 (ナツメ社保育シリーズ)

平成30年度からの新様式に対応した参考図書になっています。
10の姿についても解説されており、わかりやすくなっています。
付属のCD-ROMに、文例がたくさん掲載されています。

10の姿で伝える! 要録ハンドブック

初めて要録を書く人におすすめの1冊です。
10の姿だけでなく、要録の基本や疑問などにも答えてくれています。
保育要録だけでなく、幼稚園や認定こども園の指導要録にも対応していますので、幼保採用の場合にも使いまわせて便利ですね。

書ける! 伝わる! 保育所児童保育要録 書き方&文例集

こちらも新様式に対応した内容になっています。
「5歳児後期の育ちの姿のシート」なども付属されており、要録につながる保育の記録が取れるようになっています。

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