新型コロナウイルスの影響を受け、休園、休校措置が続いている中で、9月入学案が浮上してきました。
政府は、来秋2021年からの導入の可否を検討し、6月に方向性を示すとしています。
個人的には、来年から9月入学に移行することは賛成という立場です。
しかし、現在、我が家には幼児と乳児がおり、もし9月入学への制度改革が行われれば、この子達はモロに影響を受けることと思います。
もし9月入学制度が始まれば、保育現場でどのような問題が起こるのかを考察してみました。
学年の区切りをどうするのか
現在では、学校教育法により、4月2日生まれから、次の年の4月1日生まれが、一学年とされています。
保育園でも、その学年を区切りに保育をしている園が多いと思います。
では、9月入学に移行すれば、学年の区切りをどうするのか。
まず、どのように区切るかについて。
この2案が浮上します。
どこかの学年で9月生まれから、と変えるにしても、今すでに就学している子供達には、4月から8月生まれの子供が次年度の学習に繰り上がる、ということは出来ません。
よって、現在就学している小学校1年生以降は、4月生まれからの学年区切りを継続せざるを得ません。
学年の区切りを変更するのは、幼児以下となる可能性が高くなります。
もしかしたら‥
この辺の制度設計によって、保育現場は混乱が起こりますね。
学年の区切りを変更する場合、4月から8月生まれは、繰り上がるか繰り下がるかで、保護者が選択可能にする、というパターンも考えられます。
そのパターンであれば、来年の9月から小学校に行く子供もいれば、保育園や幼稚園に残る子供も出てくる‥。
ただし、政府の会計年度に合わせて、学年の区切りは今まで通り4月生まれから、というパターンもありえるのかもしれません。
保育人数増加による保育士不足と待機児童
学年の区切りを変えるという前提の話ですが、区切りを変更するためのズレが生じている間、4月生まれから8月生まれの5ヶ月分の子供を、今よりプラスで保育園で受け入れることとなります。
では、実際にどのくらいで保育人数が元に戻るのか、というと、学年の区切りをどこで変更するかによって変わってきます。
例えば、2020年度現在の年中児以下で一律繰り上がる、となれば、この9月入学問題による保育人数の増加は、2021年4月〜8月の間、現年長児が就学するまでの間のみ、プラスの保育人数となります。
4月の一斉入園がなくなれば、大幅な人数変更はありません。
一方で、例えば2021年9月生まれから学年の区切りを変更する、となると、2021年8月生まれが就学するまでの6年間、常にプラスの子供を預かることになります。
そうなると、増えた子供に対する保育士不足、並びに、受け入れ人数の枠組みにオーバーすることによる待機児童の増加が見込まれます。
つまり、学年の区切りの変更を低年齢に設定すればするほど、待機児童問題や保育士不足が長期化することが見込まれるんです。
現年長児の保育期間延長
現年長児は、2021年から9月入学となると、2021年3月に卒園してから、9月までの5ヶ月間、空白期間が空いてしまいます。
この5ヶ月間、保育を延長する必要があります。
特に、幼児教育無償化により、この5ヶ月間の年長児の保育費用負担も、政府として財源を確保できるのか。
そこも問題になってきますね。
また、年長児以外でも、2021年8月までが区切りとなり、早急にカリキュラムの変更などが求められます。
現年中児はどうなる?
グローバルスタンダードに合わせるのであれば、2021年9月に小学校に入学しなければいけないのは、2014年9月〜2015年8月生まれの子供達です。
ただし、現在年長児の2014年4月〜8月生まれの子供達は、現段階で就学できていないので、後ろの学年に合わせて、つまり、現年長児はみんな同時に就学する必要があります。
問題になるのは、それより下の学年です。
先程述べた、待機児童問題、保育無償化の費用負担など、総合的に考えると、現年中児以下は学年の区切りを変更する、となる可能性も大いにあります。
そうなると、一番問題になるのが、現年中児への保育です。
現年中児である2015年4月〜8月生まれが、来年の9月からの入学を目指すのか。
年中児と年長児では、保育が全然違いますよね。
カリキュラムも学年で身につけたい力も、異なります。
また、大きな行事の経験値も異なります。
その実際の置かれている状況を無視して、年中児の一部を学年繰り上げとするとなると、保育関係者のみならず、保護者からも強い反発が起きる可能性が高いです。
ただし、どこかの学年が必ず犠牲にならなければなりません。
この辺の、実際問題として起こる大きな課題を、9月入学制度を導入する場合に、どこまで具体的に考慮されるかも問題です。
年間カリキュラムの見直し
日本は四季豊かな国であり、季節に合わせた年間カリキュラムが組まれていたことと思います。
しかし、9月入園になると、年間カリキュラムも抜本的な見直しが必要です。
国としては、保育所保育指針、幼稚園教育要領の見直しが必要であり、新しい指針が出て、各園が対応できますね。
9月入園になるのであれば、国としての早い対応が重要です。
また、卒業式や入学式の歌も、桜や春を使ったものは使えなくなります。
春じゃなきゃダメ、という意見もありますが、今までの枠組みを根本的に変えるものなので、こちらは仕方がないのかなと思います。
新しい歴史は、そのようにして生まれたのかもしれません。
秋の運動会も、新学年が始まってすぐ?と思うかもしれませんが、進級してすぐの5月に運動会を実施している地域もあるそうです。
年度末に行われることの多い生活発表会も、インフルエンザや流行風邪に怯えることなく行えるようになります。
このように、今までのイメージや常識にとらわれない、カリキュラムの変更が求められます。
育休明けの復帰をどうするか
2021年から9月入園、となると、2021年4月から育休明けの復帰しようとしていた人の受け皿が必要となるでしょう。
待機児童の多い地域では、0歳児で一斉入園に入りやすいように、春から夏生まれを狙っている、という保護者も多いようです。
そのような保護者から、入園できずに復帰できないと反発が出そうです。
2021年は特例で4月の一斉入園を認めるのか、育休手当への臨時支援をして一斉の9月入園にするのか。
早い判断が望まれます。
2020年度はどうなるのか
さて、9月入学が早くても2021年から始まるかもしれない‥という状況ですが、では今年度はどうなるのか。
小学生以上は、休校対応になった地域と、そうでない地域で、確実に学力格差が生まれます。
5月末まで休校になった地域では、前年度の3月から合わせて、授業日数にしておよそ2ヶ月半の遅れがあります。
それを、夏休みや土曜日返上で‥というのは、実際に間に合うのか、ということと、気持ち的にもかわいそうです。
また、新型コロナウイルスは世界規模での流行であり、ICTを進めるにも、タブレットの生産が追いつかずに、全学生に配布できないという問題もあります。
2020年度を、今年だけ2021年の8月までの1年5ヶ月にすることで、コロナの収束の目処が立たなくても、休校を繰り返しながらも1年の学習過程になんとか追いつくことができるのではないでしょうか。
また、今は感染が確認されていない地域でも、いつ感染が広がるのかわからないので、来年の8月までに伸ばすことで、不足の事態にも柔軟に対応することが可能です。
今回の新型コロナウイルスの流行による9月入学導入の、1番のメリットになると思います。
保育に関しても、行事を繰り上げながら行うことで、中止になった行事なども行える可能性がでてきます。
ポストコロナに向けて
今、新型コロナウイルスが感染している最中の世の中ですが、コロナが終わった後、ポストコロナでは、社会はどのように変わるのか。
コロナが終わった後の社会は、ニューノーマルだと言われています。
今までの枠組みに囚われず、新しい社会を作り上げていく必要があるのです。
在宅勤務、直行直帰のハードルが低くなった。
もうすでに、小さなところから、変化は始まっています。
教育の面でも、9月入学が休校対応という位置付けから始まった議論なので、反対意見も多いようですが、もし9月入学が実現しても、実現しなくても、今までの枠組みにとらわれない、新しい取り組みが求められ、社会の変化に対応していかなければなりません。
保育でも同じですね。
去年まではこうだったから。
それが、通用しない世の中になるかもしれない、ということです。
変革が求められる時期にある、ということです。
最後に、一日も早い新型コロナウイルスの収束を心より願っております。
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